父さん母さんとマユ。
レイの兄さん(レイと同じくクローンらしいけど、呼び方が他に浮かばない)。
ステラ。
レイと艦長と議長の三人。
去年は二人だったし、こんなにたくさん祈らなかった。一輪の白い花は、散ってしまって、もう誰も飾ってくれない。
プラントに戻った俺は、ザフトの管理する単身者向けの部屋で生活していた。今後はキラさんの部隊に配属されることは内々の通達があったけれど、それまでは形だけでも、謹慎しているということを示したいらしい。
もっとも、食料品の買い出し位は外出が許されているし、聴取で家を空けるから、名目があるだけだ。そのおかげで、聴取の帰りにも関わらず誰からの監視もなく自由に歩ける。
今年も生花は買えなかったけれど、造花と一緒にドライフラワーを買った。それを三等分して見栄えを整えて、出窓の床板に置いた。人工の青空が見えるのはこの一ヶ所だけだから。
……ステラ、寂しくないかな。向こうについたら、家族と会えたかな?
あんなに寒くて冷たい湖に、ひとりぼっちにしてごめん。ステラがあれ以上に誰かに利用されないようにするのに、俺はなにもできなくて。
でも、これからもステラみたいな、怖い思いをして戦場に立たされる子が増えないように俺なりに頑張るから。
父さん、母さん、マユ。俺、これからもたくさん間違えるかもしれないけど、俺たちみたく戦争に巻き込まれる人をなくしたいんだ。マユの携帯、いつになるかは約束できないけど、ちゃんと返すよ。
レイ。おまえのこと、ルナと一緒にアスランから聞いた。最期は議長と艦長と一緒だったって。……レイがどう思ってるかわかんないけど、約束守るからな。議長の作った世界じゃないけど、ステラやレイみたいな子がいない、戦争なんて起きない世界、キラさんたちとなら実現できるかもしれない。
……レイ、もっとたくさん、話したかったよ。
ぬるい風に花びらが揺れるのを、空の色が変わるまで、ただ眺めていた。