フリオニール。優しい声に振り返ると、じいっと見てくる視線に気付いた。青のような緑のような不思議な色の持ち主は、時々こちらを見つめてくる。
用事がないときはいつもこんなで、すっかり慣れた俺は、彼が何か言葉にするか、照れてそっぽを向くか俺がもういいか、と聞いて終わらせるまで、黙って受け入れる。
瞳だけは、見られても困らないから見せている。クラウドが綺麗だ、と言った物は綺麗なものだと思えるからだ。
だから俺は眼球だけは傷付けまいとするし、穴があくほどの熱視線にだって耐える。
ただ、見つめ合うだけで俺がのぼせ上がってしまうから、無理を言って程々にしてもらうけれど。
「クラウド、そろそろ……」
「ん、わかった」
俺が限界を告げると、クラウドはさっと視線を空に移して、相変わらずの天気だな、とまるで何もなかったように話を振るのだ。<>br
俺は突然変わる雰囲気に戸惑って、いつもああ、とかそうだな、とか簡単な応答しかできずにいる。
フリオニール。優しい声がする。これは仲間と会話するときのトーン。
顔を向けると、彼が腕を伸ばしてきて、フリオニール、と俺を呼ぶ。そんな素振りも無かったのに、
妙に甘ったるい響きで俺の内部に侵入して、退路を塞ぐ。
罠にかかった訳でもないのに、逃れられない。
最初は軽く触れるだけ。そこから徐々に、より深く落ちていく。何度も引きずり込まれ、翻弄され、クラウドのペースにのせられるままキスを繰り返す。
ようやく解放されても、普段涼しい彼の表情が熱を帯びて、それすらも余裕のない自分には大人の余裕と言うものを見せつけられているようで、うらやましい、という一言をどうにか飲み込むのに必死なのに、
「やっぱりそうやって顔真っ赤にしてるあんたが一番カワイイ」
と、イタズラに成功した子どものような顔で笑うから、今日も何も言えずにいる。